あと、>>115で題名だけ挙げた作品の紹介です。

山崎洋子「三階の魔女」(講談社文庫)★★★★
1986〜1989年に発表された作品を収めた短編集。
「ラブレター」は、同窓会で再会した級友と不倫の関係になった男。相手から借金を申し込まれるの
だが・・・。冒頭の伏線から意外性のある結末までスキがない出来の佳作。
「狼女は眠れない」は誘拐物。祖父母に甘やかされている男児を誘拐した女性。実は・・・。
「いきなりハードボイルド」はユーモア調だが箸休め程度の作品。
「六本木メランコリー」は1960年代末に青春を過ごしたデザイナーの話。不倫の話やら団塊世代の
1960年代のノスタルジックな話で大したことないかと思っていたら、ラストでトリッキーな謎解
き物に変貌する良作。「赤いお月さま」は、モテない男が巻き込まれた罠の話。凡作。
「人形と暮らす女」は、乳母車に乗せた人形を自分の娘だと信じている母親に出会ったヒロイン。
精神病かと同情して彼女の家で家政婦として働き始めるが・・・。ホラーかと思わせて謎解き物に
変貌し、更にラストでは・・・、という凝った作品。
表題作は、カラオケスナックで働くヒロインの隣家に、人質を取って立てこもった男。ヒロイン
の知り合いだと言い、一緒に無理心中してくれないと隣家の住人を殺す、などと無茶苦茶な要求
を突き付けてくる・・・。これも、奇抜な冒頭のやり取りがラストで一転、鮮やかな結末を迎え
る佳作です。