高木彬光「どくろ観音−千両文七捕物帳」(春陽文庫)★★★☆
初出等の詳細は不明ですが、主に1950年代に発表された、白皙の美男子だが女嫌いの千両文七親分
(神津恭介に共通しますね)と、手下の合点勘八が活躍する捕物帳シリーズ。
「天狗の仇討ち」、人間には不可能な状況での怪事件、天狗の仕業かと思われたが・・・。トリッキー
ではあるが、解決がやや唐突かな。
「妖異雛人形」も、駕篭からの人間消失トリックが出てきて期待させるが、真相はあっけない。
その他、「新牡丹燈籠記」では長屋の密室からの消失、「怪談一つ家」はバラバラ死体の謎、「荒寺の
鬼」はアリバイ工作、表題作は作者お得意の刺青ネタに筋書き殺人の変形、更に「離魂病」では
クリスティの超有名作品に挑むなど、トリッキーな趣向がてんこ盛りで、その点は満足できた
のですが、如何せん、文庫版で各編30ページ弱の分量では、伏線や解明手順があっけなさ過ぎ
ますね。
とは言え、全12編、先ず先ずの収穫でした。