山本周五郎「赤ひげ診療譚」(新潮文庫)★★★☆
江戸時代の療養所、「小石川養生所」の熱血医師「赤ひげ」と、見習い医師の保本登を主人公にした1959年の
時代物連作集。黒沢明の名画でお馴染みの作者の代表作の一つ。ミステリ風の話もあるかと思って読んで
みましたが、さて。
最初の第1話が、或るトリックを使ったミステリ短編で驚き、期待させたのですが、以降の作品はミステ
リ味は薄くなってゆくか全く無しで残念。しかし、普通の小説としても十分面白かったですね(★3つ半
の評価はミステリとしての評価ではないのでご容赦)。

新田次郎「つぶやき岩の秘密」(新潮文庫)★★★☆
1972年の少年冒険小説、NHK少年ドラマシリーズでも映像化された屈指の名作とのこと。・・・最近、
新田次郎の復刊が相次いでいるなあ、と思ったら、今年は生誕100年だったのですね。
・・・これは文句なしの傑作でしょう。ジュブナイルのミステリとしても十分な出来栄え。大人へと向
かう少年の心理を実に細やかに描いた骨太の作品。殺人、謎めいた要塞跡、暗号解読などの趣向も
バッチリ。まあ「本格の謎解き」とは言えないけど、久々に昭和の熱血少年小説に出会えて嬉しかっ
たのでw