阿井渉介「京都原宿ハウスマヌカン殺人事件」(講談社ノベルス)(採点不能)
1987年のノンシリーズ長編。この素晴らしいタイトルw、「京都」、「原宿」、「ハウスマヌカン」と来て、作者は
阿井渉介とくれば、もうダメ押し。当時ヒットした「夜霧のハウスマヌカン」という一発屋イロモノ歌謡曲
に便乗したのか、三流ダメミス・クズミスの匂いがプンプンしてきて、迷わず購入。もはや性癖だなw
原宿のブティックで働くハウスマヌカンの「わたし」こと小泉祥子。専属モデルやスタイリスト、カメラマン
らと京都へ撮影旅行に出かけたが、独りで寺詣りに行ったところ、謎の男につけ回される。実はその男は
ブティックオーナーの時田好子が男装していたもので、彼女はやがて他殺体となって発見される。現場付
近にいてアリバイのない祥子は京都府警のボンクラ刑事・牛尾から疑われ、自らの潔白を明かすべく、犯人
探しに乗り出すのだが、親友も殺され、窮地に陥る・・・。
文体が少々ヘンでして、主人公の「わたし、・・・・なんです」といった独白体、宇能鴻一郎を少々上品にした
ような感じといったら良いか・・・、辟易しました。
電話のアリバイ工作やら、マンション階段での人間消失トリック、ヒロインのクルマのトランクに死体を
隠したトリックなどなど、トリッキーな趣向もあるのですが、いずれもショボい真相で脱力。但し、その
伏線はキッチリと張られており、「そうか、あの人物のあの言動はそういう意味だったのか」と感心する
ところは一応ありました。
あと牛尾刑事のキャラも類型を破るもので、後年の「警視庁捜査一課事件簿」シリーズの菱谷刑事とは逆の
「陽性な不良刑事」でユニークではありますが、やはり2時間ドラマ臭さが抜けなくて・・・。
なお本書は講談社ノベルス1987年3月刊、あの「十角館・・・」の半年前、日本のミステリ界はここまで混迷を
極めていたのか・・・wまあ、「夜明け前が一番暗い」とも言いますからw