藤丸卓哉「殺人周波(サイクル)」(祥伝社ノンノベルス)★★☆
作者は子供向けの科学読み物なども書いているようですが、本作は1983年のミステリデビュー作の
長編、「新科学推理小説」などと銘打ち、中島河太郎の推薦文まで載せての登場ですが・・・。
通信機器メーカーのビル地下駐車場で起きた爆弾事件。犠牲となったのは社長の娘婿の若手重役だ
った。先代の社長を追い落として権勢を振るう現社長に反対する一派の仕業か、なかでも前社長の
息子に容疑がかかるが、彼には事件発生時、アメリカにいたというアリバイが。爆弾に使われた装
置は、絶対に遠隔操作のできるものではなかった。更に、第二の爆破を予告する脅迫状が届く。警
視庁捜査一課の若手刑事・諌山は事件の真相を追うのだが・・・。
第二の脅迫事件で事件を錯綜させてメリハリをつけたり、主人公の刑事なども丁寧に描かれてはい
ますが、いかんせん謎解きの方が少々お粗末。或る小道具(というか大道具?)の思いがけない役割
などには感心しましたが、それ以上の説明は、作者も出来るだけ分かり易くするよう頑張ってはい
ますが、科学オンチのシロウトには理解不能。ああいったメカニズムが、果たしてミステリのトリ
ックとして妥当なものか疑問ですね。また現代では、本作のメイントリックに関わる分野は、この
二十年ぐらいで驚異的な発達を遂げているので、今読むと何とも古めかしい感じがしますね。