これのことかね。

406は、あてがわれた個室で娘を待っていた。
以前から楽しみにしていたソープであった。
この日のために、かねを溜めていた。
その手には西村寿行の小説がある。
この本に描かれているプレイをしてみたい--そう申し出た時、風俗嬢は怪訝な表情を浮かべた。
西村寿行という作家を知らなかったのだ。
406は説明した。その小説には美しい人妻の激しい凌辱が描かれている、と。
この話の人妻のように、縛って後ろから犯させていただきたい、と。
たっぷりと陵辱し、その後でぜひお仕えさせていただきたい、そう406は懇願した。
準備をしますから、ちょっと待っててね--そう言い残して個室を出ていった風俗嬢の笑顔が脳裡にある。
縛って器具を使う。何度も奉仕させる。その後で美しいお尻さまに仕えさせていただく。
406の脳裡は暗い情欲の炎で焼けただれていた。
そこまで考えて406は、ふと気配を感じた。
振り向くとドアの前に男が立っていた。
痩せた男だった。暗い眸をしている。この眸を知っていると406は思った。
男から、ふと死臭を嗅いだような気がした。それが誰の死臭かはわからなかった。
「お客様、ちょっと事務所の方までお越しいただけますでしょうか」
丁寧な言葉の中に、有無をいわさぬ威圧がこもっていた。
「ぼ、ぼ、ぼ、ぼ」
舌がもつれた。僕は客だぞ、と言おうとしたが言葉にならなかった。
「うちの娘に特殊なプレイをお求めのようですが、あいにくと当店はSMクラブではないので、ね」
男の声に嗤いがこもったが、その眸は依然暗く笑いのかけらも浮かんではいなかった。
「そういうお客様は事務所の方で特別なおもてなしをして差し上げることが決まりになってましてね」
男の口ぶりに幽かな苛立ちのようなものがあらわれていた。
406は気がついた。
先ほど男から嗅ぎとった死臭は、自分のものであったのだ、と。
男の暗い双眸に、自分は啖らわれる運命にあったのだ。
406は失禁していた。

※406は当時のスレ番。当時の書き込みから一部改訂しています。