叙述トリック考えた [無断転載禁止]©2ch.net
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
主演女優は、腕を振り回し、セリフを語りだす。
『ああ、いつまでこの山荘にいなければならないの。
ここは隠れるには好都合だけど、食料が尽きたらどうすればいいの』
「カット!」主演女優に、男の声がかかる。
「いいよ、素晴らしい演技だよ。じゃあちょっと休憩しよう」
主演女優は手近な椅子に腰かけて、顔をかきむしった。
セリフをぶつぶつと呟く。彼女は一流の存在である。
常にマネージャーが付き、移動の時は専任のドライバーが
車を運転する。自分の足で歩くことすら少ない。メイクも他人任せ。
特別な女性である。ただし、テレビドラマの主演という
プレッシャーが重くのしかかっている。彼女は顔をかきむしった。
別の男の声がした。「監督、ちょっといいですか」
「撮影中だぞ、うるさいな。階段を上り下りするときは静かにしろ」
「すみません。あの……、マネージャーさんが二階で倒れてます」
「へ?」
「俺が確認してきます。監督と音声さんはここにいてください」 「お前らうるさいよ。二人とも階段は静かに下りろ」
「すみません。あの……。マネさんが二階の控室で倒れてました。
後ろから誰かに肩のあたりを強く叩かれたそうです。怯えて震えてます」
「誰かに叩かれたって、どういうことだ。ケンカか?」
「ケンカじゃないです。盗みについて調べていたそうです」「盗み?」
「監督も言ってましたよね。最近よく撮影機材がなくなるって」
「……おいまさか。なくなったんじゃなくて、盗まれてたのか」
「それを調べようと、本番中に二階の控室へ行ったら後ろから……、
だそうです。それから、撮影を続けてほしいと訴えてます。
『肩の打撲で命に別条はないし、救急車や警察を呼ぶのは
収録がすべて終わってからでいい』だそうです」
「なんとまあ。チビでガリガリのくせに強い女性だな、マネさんは」
「それで、どうします? 監督」
「どうするもこうするも、お前ら二人のうちのどちらかが
やったんじゃないのか? 監督兼撮影担当の俺と、音声担当のこいつは
ずっとここにいたんだし。お前ら、いつも金欠だとか騒いでたよな」
「そんな!」「黙れ!」四人の男たちのささやき声が交錯する。
「確かに俺はドライバーで、女優さんをここに運んでしまえば
撮影中はすることがないけど、だからって盗みなんて」
「照明担当の俺も、セッティングが終わったらヒマだけど……あ!」 「なにかわかったのか」
「はい。ちょっと見ててください。今から俺が
あの階段をゆっくり上がります」
「……それがどうした」「足音、聞こえましたよね」「足音?」
「はい。ところでさっき、ドライバーさんが階段を上り下りしたら
監督は怒ってましたよね、うるさいと」「そうだったな」
「男だと、足音がします。階段がきしむわけです。
たぶん、女性の体重なら、階段は音をたてないと思います。
二階のマネさんに警戒されることなく、背後まで近づくことが
できたでしょう。犯人は、おそらく女性です」
「女性ということは……」
「それは後でもいいですよね。撮影を再開しましょう」
「そ、そうだな」そして、監督は声を張り上げる。
「準備はいいかな?」
監督の声を聞いて、セリフを呟きながら顔をかきむしっていた
主演女優は、微笑みを浮かべて椅子から立ち上がった。
彼女は一流の存在である。常にマネージャーが付き、
移動の時は専任のドライバーが車を運転する。
自分の足で歩くことすら少ない。メイクも他人任せ。
……その主演女優の顔を直そうと、部屋のすみで
じっとしていたメイク担当の女性が駆け寄った……。 「資産家の金満氏の事件聞いた?」
「あの豪邸に住んでる金満氏?運転手つきの高そうな外車に乗ってるのを見たことがあるよ」
「うん、その彼がね、ドライバーによるひと突きで殺されてたそうだ」
「で、犯人は?」
「え?」 『通学路』
私は中学二年生。数年前のことだけど通学途中で学校の近くに踏み切りがありました。
そこがなかなか開かなくて電車が来ないのを確かめて
遮断機が下りているすき間からサッと駆け抜ける生徒が後を絶たず。
そんなわけで、よくそこで事故が起きた。
ある日も踏み切りを渡るとき、地面の端に置かれた真新しい花束が目に入った。
私は学校に行って親友のU美にその話をしようとしてもU美が見当たらない。
翌日もその翌日も私はU美に会えなかった。
あれから何年もずっと毎日通学しているのにU美に会うことが出来なくて私は悲しい日々を送っています。 『初日』
現代では真夜中でも、どこかしら街灯があり、
真の闇ってものにはなかなか出くわさないものですが、
一昔前は、深夜にもなると、それはもう辺り一面真っ暗闇な場所はけっこうあったものでございます。
そんなですから、治安のために交代で町内の夜回りに出る、なんてものもありました。
根っからの怖がりだった徳兵衛さん。今夜が初日なもんで、さすがに怖い。
真っ暗な夜道を一人でキョロキョロしておりますと、
そこに現れましたのは飲み友達だった熊五郎さん。
「熊五郎さん!」と声をかけようとしますと
「ヒェー、ビックリした。脅かさないでくれよ。なんだ、徳兵衛さんじゃねえか」
知った顔に会い一安心の徳兵衛さん。怖さもスッと和らぎます。
「どうでぇ、徳兵衛さん。近場の屋台で1杯やっていかねえか?」
「いや、でも夜回りは?」と言おうとした徳兵衛さんより先に、熊五郎さんが
「そうそう、今夜は駄目だった。夜回りの仕事しなきゃいけないんだ。当番だからな」
と少し間があって、首をひねりつつ熊五郎さんが
「徳兵衛さん、あんた、そういや昨晩亡くなったんじゃ?」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています