俺は今年で二十歳になる
こんな田舎の生活にウンザリしていた

『裏のおじさんが大工を探しているよ。働いてみたら?』
『大工ってトンカチでただトンカンするだけだろ。スカイツリーはナックル・ウォール工法で建てられたらしいけど』

『暇なら田んぼの収穫手伝ってくれない?』
『お前の所は収穫にコンバインも使ってないのか?なんで手作業でやるんだよ』

『お前は何かやりたいことはないのか?』
『あるにはあるけど。コンピュータの勉強をしたいんだ』
『コン…?』

そんな俺は周りから孤立していた

『引っ越しても便りを送るからね』
『便りだなんて。せめて電話があればいいのに』
『あんたはときどき変な言葉を使うよね。電話って何のこと?』
『電話というのは遠くの人と話が出来て一番新しいやつは薄い板みたいな形をしてるんだ』
『ふぅん。もし寂しいなら会いに来なよ』
『歩いたら二日もかかるじゃないか。車があればな』
『クルマ?それは何?』
『車はすごい速さの乗り物のことだよ』
『乗り物?籠のこと?』
『違うよ。人はただ座ってるだけでよくて馬の何倍もの速さで走るんだ』
『あんたって想像力だけは立派なのね』