>>465
ところが逆じゃないんです。正しい意味で用いられています
ネット上にも多数勘違いされている人がいますが、無理もありません
その部分だけ読むと確かに誤用な気がします。しかし実は正用なのです
文意が伝わらないと説明ができないので、必要な箇所を抜粋しますと

「能く、世間の立派な人は未来は自分で選ぶんだと云いますけど——未来なんてものは選べないんだと思うんです。
自分で決められるものじゃない」
「まあ——そうだろうな」
 未来を選ぶとはまた歯の浮くような台詞だ。人は流されるように生きている。
自分の意志で泳いでいると思うのは驕りである。流れに棹さしてみても無駄で、遡ることなど出来はしない。そもそも。
 未来なんてものはない。

となり、これは関口のセリフを受けて語り手が未来について思索している。というシーンで
ノベルス版569頁、文庫版908頁から引用しています
読んでもらえれば解ると思いますが、ここで語り手が考えている『流れ』=『傾向』とは
未来を自分の意志で選択しようとする態度、のことであり、掉さしても無駄、とは
その勢いを助長することはできない、という意味に読めるはずです
その後の、『遡る』の字義が問題で、これが勘違いの要因だと思うのですが、これは過去に遡るという意味ではありません
ここを過去に遡るという意味で読んでしまうと文章全体の意味がおかしくなってしまいますし、その後のセンテンスとの繋がりが変です
時間は、未来〜現在〜過去、という風に流れますので、時間を流れに喩えた場合は未来が上流となります
つまり語り手は、未来へ加速することなどできない。といっているわけです

と、まあこう読むと本来の意味の【流れに掉さす】で矛盾なく文章を消化できます。長文失礼