これらすべてが犯人の狙いだったとしたらどうだろうか。

使われたトリックそのものは白痴君の言う通りだと思う。伏線や証拠がそれら
を示している。
しかし、いくら昭和40年代といえど、骨格や白痴君の言う肉体変化でいずれ
は件の首の持ち主が誰かはわかってしまう。
その時、提示された証拠の数々、足りないパーツ、首のない死体、髪をやいた
ような跡、これらから導き出される犯人は一人しかいない。行方不明となって
いる劇団員だ。
そもそもなぜ探偵たちは神社に向かったのか?それはカルトが彼女が神社に向
かって歩いてのを見たと言ったからだ。
カルトの目的は、まず二人が死んだという状況を作り出す事、そしてその後、男
が彼女というか彼を殺し行方不明という状況を作る事で、完全犯罪にしてしまう
ことだった。
そう考えると、この死体入れ替え自体、カルト以外には思いつかないものである
と思う。あの伝承を参考に、わずか数日でこの完全犯罪を思いつけるのはカルト。
サングラスや荷物の少なさだが、あの二人はそもそも長期滞在するつもりは
なく、カルトを何らかの手段で脅迫して金でもせしめるつもりだった。とすれば
無理はない。金を入れる為に大き目のバッグを、身分証の類はカルトがあらかじ
め盗んでおいた。