二美は自宅に帰ってくるなり、四美の部屋を訪れた。ノックしてからドアを開けると、床に倒れている四美が目に入る。
彼女はびっくりして、思わず「どうしたの!?」と声をかけるが返事はない。しかし四美の目は見開かれている。
何かを悟った二美はけたたましい悲鳴をあげるも、しばらく呆然とし、それから慌てて救急車を呼んだ。時刻は午後五時五分。
救急車が到着する前に、ほかの家族が次々と一人ずつ帰宅してきた。彼女たちは四美の姿を見てそれぞれの反応を示した。
一美は唖然とし、三美はうろたえ、五美はけたたましい悲鳴をあげた。

被害者は四美。美人五つ子姉妹の一人で、被害者を発見した二美と、あと一美と三美と五美の五人姉妹で暮らしていた。
各自が自分の部屋を持っており、被害者は彼女自身の部屋で発見された。
死因は扼殺。部屋は荒らされた様子もなく綺麗だったが、あるはずの四美の財布がなくなっていた。

犯人の三美は警察に捕まったが、財布は盗んでいないと供述をしている。警察では四美の財布の探索や動機の解明にあたる方針だ。



同日。その隣の家では、また別の殺人事件が起きていた。
被害者は庭に倒れているところを発見され、死因は庭にあった植木鉢で頭を殴られたことによる。
死亡推定時刻は午後五時五分。最近の科学捜査は優秀なので信用してもいいだろう。
その家には、一郎、二郎、三郎の三人兄弟が住んでおり、被害者は通いで来ている家政婦だった。
動機の面から容疑者として浮かび上がったのが三郎。しかし彼には一見するとアリバイがあるように見える。このアリバイを崩すことが当面の課題と思われる。
兄弟の三人ともが、午後五時五分には家の中に居たと証言している。家の中から死体発見現場までは往復で五分かかる。なんて庭が広いんだろう。