「ダイイングメッセージの怪」

ある企業の本社ビルの屋上で女社長の死体が発見された。
死亡推定時刻はクリスマスイブの午前2〜4時頃。
衣類は身に付けておらず、死因は凍死だった。
屋上は鍵が掛けられていて、1階にある警備室内にいた2名の警備員が交代で監視していたが、その時間帯に立ち入った者は誰もおらず、侵入された形跡も発見出来無かった。
屋上の鍵も警備員室内の鍵箱で保管され、持ち出しは無かった。
被害者の体内から睡眠薬とアルコールが検出されたのだが、衣類や酒類の容器が現場に無かった事から警察は他殺と断定し、遺体の傍らにあった「H」の文字から、先日不当に解雇され被害者に強い恨みを抱いていると思われる浜という元社員が浮上、私は部下を連れて早速事情聴取をする事にした。
外見は30代、ボサボサの髪に無精ヒゲ、厚目のメガネをかけ、真冬なのに汗をかいている、いわゆるキモデブであった。
「僕は社長のサンドバッグでした。何一つ仕事は与えられず、社長の機嫌が悪い時だけ社長室に呼び出されてひたすら罵声を浴びせかけられたり蹴られたり、毎日パワハラを受けていました。遂に耐えられなくなって、初めて社長をひっぱたいたんです。そうしたら自らシャツを引き裂いてレ○プされかけたと警備室に逃げ込んで私に性犯罪者の汚名を着せて解雇したのです。当然殺したいくらいに恨んでましたよ。本当に神様っているんですね。出来ることなら僕の手でやりたかった……。」
「お前がやったんじゃないのか?」と後輩刑事が食って掛かろうとしたが、私は「違う違う、この人は犯人じゃないよ。」と慌てて彼を制止した。

なぜ、私は浜が犯人ではないと見抜けたのだろうか?

もちろん私が犯人だったというわけではない。