長らく独身貴族を気取ってきたのだが、四十男の独り暮らしも寂しくなってきたので顔の広い伯父に相談したところ、
伯父の知人のいとこ(はとこだったかもしれない)が婚活しているらしいという情報を教えてくれた。
何でも私より一つ二つ年下で、国文科を出て短歌やエッセイの世界で活躍しているとのこと。ピアノが趣味で、弾くのも聴くのも好きらしい。親族には学者や芸術家が多いらしいから、だいぶ文化的な環境で過ごして来たんだろう。
話を聞く限り、だいぶ好印象だ。俺も音楽や文学は好きだし、子供は別に欲しくないので相手の年齢も特に気にならない。
妻とそれなりに余裕のある暮らしをして、何なら文芸活動の援助も出来るくらいの収入はあるから、経済的にも特に問題は無い。
思い切って、伯父に仲介を頼んでみることにした。
「そうだなあ、おまえも良い年だが、まあ条件は悪くないし、親父さんに似て見た目も良い。相手もその年で婚活してるんだから、望み薄ってことも無いだろう」
伯父は頼みを引き受けてくれたが、一週間後、何とも申し訳ないという顔つきで、こう伝えてきた。
「本当に済まんが、あの話は無理だ。おまえのせいでも先方のせいでもなく、私がいけないんだが、まあ駄目だったよ」
伯父が何か失言でもして、先方が気を悪くしたのかと思ったが、そういうことでもないらしい。
「別の相手が決まったとか、そういうんでもない。間抜けな話さ。と言うのもな……」
続く伯父の言葉に、私は唖然としつつも納得するしかなかった。

Q さて、叔父は何と言葉を続けたのだろうか?