>>521

そう言うのは、近年の研究により否定されている。

中でも有名なのは、細菌の感染についての実験である。

細菌が宿主に感染している場合、その繁殖力が大きい個体ほど多くの子孫を残すが、
あまりにも繁殖力が強いと宿主を殺し、集団全体が滅亡してしまう。

したがって、ほどほどに繁殖して宿主に菌をばらまいてもらう利他的な個体が生き残る、
というのが新しい群淘汰(多レベル淘汰)理論による予測だ。

これに対して『血縁淘汰理論』が正しければ、繁殖力が最大の利己的な個体が勝つはずだ。

これは医学にとっても重要な問題なので、世界中で多くの実験が行なわれたが、
結果は一致して『群淘汰理論』を支持した。

繁殖力の強い細菌の感染した宿主は(菌もろとも)死んでしまい、生き残った細菌の
繁殖力は最初は強まるが後には弱まり、菌の広がる範囲が最大になるように繁殖力が
最適化されたのである(Sober-Wilson)。

個々の細菌にとっては、感染力を弱めて宿主を生かすことは利他的な行動だが、
その結果、集団が最大化されて遺伝子の数も最大化される。

同様の集団レベルの競争は、社会的昆虫のコロニーなどにも広く見られる。

人類は、利他的行動をして『群』の数を増やそうとする『利己的遺伝子』を持った存在なのだ。