>>555 つづき

投獄は、彼らを懲らしめ、彼らの人生を改善させるのではなくますます悲惨なものに
するだけではないのか、とね。

日本での麻薬政策是正における一番大きな障害は、日本では麻薬の取り締まりは
うまくいっている、という認識です。

それなのになぜそれを変える必要があるのか、というわけです。でも、女性受刑者の40%、
若い女性では50%以上、男性受刑者の25%が麻薬取締法違反で服役しているという
事実を考えてみてください。

そのことに疑問を持っている人たちがいます。日本では、服役者の数を減らそうという
立派な心がけがあるし、実際ここ数年、服役者の数は若干減少しています。

厚生労働省や財務省よりも法務省が、私の言うことに少なくとも耳を傾ける用意が
あったということも興味深いです。

法務省の方々とのミーティング中、私の言うことを聞いて、ある方が、法学部にいた
ときのことを思い出したと言われたんです。犯罪の中には被害者が不在のものがあり、
その行為によって直接被害を蒙る者がいないのにその行為を行った者の自由を
剥奪するのは正しいことなのかという問いを思い出した、と。

ですから少しは考えるきっかけになれたと思いますね。人は一般に、自分は人道的に
生きていると思うものです。道徳的観点というものを持っている。麻薬撲滅戦争、そして、
禁じられた薬物を所持した、あるいは使用したというだけの人を悪魔扱いし、非難し、
汚名を着せてもかまわない、と考えるのは、自由社会に生きるとはどういうことであるか、
という基本的な概念と相容れないのです。

政府が国民の自由を奪っていいのは他者に危害を加えている場合だけだという考え方とね。
でもほとんどの人は、この道義性の矛盾について考えようとはしません。