ようやく向精神薬指定を受けたデパスだが、これだけで処方が大幅に減るとは限らない。

「処方の上限期間が短くなったことで医師に対する注意喚起にはなる。しかし、自分がどれだけ危ない薬を出しているのか認識していない医師もいます」(前出の松田氏)

デパスの適用範囲は神経症による不安、緊張、抑うつ、睡眠障害、うつ病による不安、腰痛症など非常に広いため、急には処方数が減りそうもない。

高齢者が服用を注意すべき精神科の薬は、他にもたくさんある。

「同じベンゾジアゼピン系の睡眠薬でハルシオン、レンドルミン、リスミー、エリミン、ユーロジンなどは依存性が高い。デパス同様に転倒や認知症の危険が高まります。

他にはパキシルに代表されるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という抗うつ剤です。本当はアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症なのに、元気がないという根拠でうつ病と誤診されるケースがよくあります。

安易にSSRIを処方された結果、副作用でふらついて転倒したり攻撃的になったりする。向精神薬は急にやめると離脱症状(禁断症状)があり、医師と相談しながら徐々に減量する必要があります」(前出の長尾氏)

高齢者は肝臓や腎臓の代謝が落ちているため、体内に薬の成分が残りやすく、副作用が若い人より強く出ることも多い。

「医師も専門が細分化されており、自分の専門分野以外には興味のない人もいるので、病院で出された通りに薬を飲んでいたら、大変なことになったということもありえます」(前出の松田氏)

安定剤や睡眠薬を飲む際は、充分な注意と覚悟を持たないとかえって寿命を縮めることになる。