>>218 追加情報 および >>289 重要部分の抜粋引用

薬物依存は、人格批判やバッシングでは何も解決されないにもかかわらず、
メディアには専門的な知識を持たないコメンテーターが登場し、意見を撒き散らしている。

では、彼らにはどのような治療が必要なのだろうか。薬物依存症治療の専門家として
国内外の事情に詳しい原田隆之氏に聞いた。

「今回、田代まさしさんの報道で気になったのは、フードをかぶせた状態で連行する
姿を繰り返しテレビで映していたこと。’16年4月、国連総会の薬物問題特別セッション
では、薬物使用者の人権と尊厳を守ることが再確認されています。刑罰だけでなく
社会的な吊るし上げを受けた田代さんのケースは、国連決議に反しています」

この国連総会決議では、刑罰を与えるよりも治療や教育、福祉を優先することが
宣言された。各国ともに薬物密売を重罪としているのは同じだが、薬物使用者まで
刑務所に入れているのは、いまや先進国では日本だけだ。

「欧米諸国も10年ほど前までは、日本と同様の考え方でしたが、その後の研究で、
薬物については刑罰より依存症治療のほうが効果的だということが多くのエビデンスで
明らかになりました。拘禁下で薬物依存症治療を実施した場合、再犯率は約15ポイント低下。
社会内で治療するとさらに効果的となり、再犯率はおよそ30ポイント低下することが実証済みです」

コスト面でも大きな違いがあり、日本の場合、受刑者1人当たりにかかる年間刑務所
関連経費は約380万円。一方、アメリカ保健福祉省の調査によると、入院治療が1万2000ドル
(約129万円)、外来治療にいたってはわずか2700ドル(約29万円)との試算が出ているという。

「EUの薬物政策においても、薬物使用の罪を犯した者には、教育、治療、リハビリテーション、
アフターケアなどを提供すべきと規定されています。EUの多くの国では、薬物の自己使用を
刑事罰や拘禁刑の対象外にする『非刑罰化』や、それだけでは処罰されない『非犯罪化』の
動きが進んでいます。いずれは薬物をやめたいと思っている人は多く、捕まらないとわかれば、
みずから治療を求めやすくなります。非犯罪化することで依存症の人は減るんですよ」