0032君の名は(茸)
2017/10/08(日) 01:56:23.68ID:HJTbO45G0初日はタクシーで登山口に行き、山小屋で一泊してからスノートレックする計画だった。
3人で一緒に行きたかったが、みなみは単独の収録があるため、ひとりで遅れて山小屋に向かうことになった。
生駒と真夏は一緒になり、みなみよりも一足先に山小屋へ向かって山道を登っていた。
最初のうちは足どりも軽く、2人で話をしながら登って盛り上がっていたが、山道はしだいに雪深くなり氷結箇所もでてきたため、2人は登山靴にアイゼンを装着した。
慣れないアイゼン歩行は意外に疲れ、生駒は途中休憩のときついウトウトして眠ってしまった……。
気がつくと山小屋が見えた。どうやら小屋のすぐ近くで寝てしまったらしい。
生駒が山小屋に入って辺りを見回すと、真夏が真剣な面持ちで立っていた。
「どうしたの真夏?」
真夏の異様な雰囲気に生駒は問いかけた。
「ねぇいこまちゃん... 気をしっかり持って聞いてね。実はさっき警察から連絡があって、ひとりで途中まで来ていたみなみが山道から落ちて死んだらしいの。」
「そんな……」
生駒は絶句した。仲良しで大切な仲間でもあるみなみが事故で死んでしまうなんて……。
ショックを受けた生駒は、泣きながらひとりひざを抱えて塞ぎこんでいた。
そして夜、山小屋のドアが乱暴にノックされた。
「ねえ! いこまちゃん!ここを開けてちょうだい!」
みなみの声だ! 生駒はドアを開けようとしたが、真夏が引きとめた。
「開けちゃダメ、みなみはもう死んでいるのよ!きっと幽霊だわ。いこまちゃんを向こうの世界に連れて行こうとしているのよ。ゼッタイに開けちゃいけない!」
真夏は強い口調で生駒を諭した。
しかしドアをノックする音はさらに続いた。
「ねぇいこまちゃん、いるんでしょ!?今すぐドアを開けてお願い!」
みなみの必死な声が聞こえる。みなみに会いたい、もう一度だけみなみの顔を見たい…。
振り返ると、なぜだか真夏がニヤニヤと笑っている。なんでこんなたいへんな時に笑っていられるの?
「真夏あんたおかしいよ! やっぱりみなみを助けなきゃ!」
生駒は真夏の制止を振り切ってドアを開けた。みなみの待っているそのドアを…。
次の瞬間、景色が変わった。
白い天井が見える。そして目を赤くはらしたみなみの顔が見えた。
「いこまちゃん... よかった本当によかった……」
みなみはそういって生駒を抱きしめた。
訳のわからないでいる生駒に、みなみは事情を語り始めた。
それによると事故に遭ったのは生駒と真夏たちの方で、氷結した沢に滑落して
生駒は一晩病院のベッドで生死の境をさまよっていたという。
「まなつは死んじゃったの...。頭を強く打って即死だったみたい。」
みなみは泣きながらぽつりと告げる。
生駒が先ほど見た山小屋の光景を話すと、みなみはこう言った。
「きっとまなつはさびしかったんだよ。 いこまちゃんを一緒に連れて行こうとしたのかもしれないね。」
おやすみなみ∩ω∩♪♪