https://news.yahoo.co.jp/articles/7913e9f2f84d873f522ddb8c6ee10f8d94479a59
「会場700人」は黒字になるが
「会場200人+配信500人」は赤字になる理由

―― 私たちから見ると、「配信ライブ」というのは、小回りが利くというか、遠方のお客さんも交通費要らずで参加できるし、今後のライブエンターテインメントにおける可能性の1つではないかと思うのですが、実際はいかがでしょう?
 
緒方 現状では、ほとんどのアーティストは配信込みでライブをやっても、赤字だと思います。
 
―― そうなんですか!?
 
緒方 私は12月26日に秋葉原の神田明神ホールで「禊2020-疫病退散!-」と題したライブをやるのですが(取材時)、会場の本来のキャパは700ちょっとです。この会場はこれまでも満員の状態で使用してきたのですが、今回は新型コロナ感染予防対策として、現地会場の人数は200人に絞っています。
 
―― これまで700人のお客さんが入っていた会場に200人ですか。では残りの500人のお客さんは配信で参加するのですね。配信であれば、遠方のお客さんも視聴できるし、敷居の低いから、お客さんの数も500人より増えそうですが。
 
緒方 それが、配信チケット代を収益に回しても、採算が取れるのかというと、そうではないんです。
配信のチケット料金は、現地会場チケット料金の半額から半額以下の設定なんですよ。そして売れる枚数も、今までより減ってしまうだろうと考えています。
 
―― なぜでしょうか。チケット代が半額であれば、購入者は増えるのでは?
 
緒方 たとえば、これまで家族やカップル、友達同士でライブに来てくれていた人たちは、チケットを人数分購入してくれていたのですが、自宅で一緒に観るならチケットは1枚で済みます。
会場ライブなら2枚売れたはずが、配信ライブだと1枚しか売れないわけです。
 
―― なるほど。では、配信によって遠方住まいの方が新しくお客さんになったということは?
 
吉江 地方でお客さんが増えているかといえば、それはまだ実感できていないのが正直なところかと思います。それよりは、緒方さんが言ってくれた通り、「1人1枚」が崩れたことなどで、全体の総数が減った印象があります。
 
緒方 かつ、物販グッズが伸びません。もちろん「出ているグッズは全部買う」という猛者の方もいますが、多くの方にとってグッズは「みんなで一緒に応援する」ためのものか、「会場に行った」記念品ですよね。
 
 みんなでおそろいのTシャツを着て、ペンライトを振ったりして応援したいとか、ライブが良かったから記念のものを買って帰りたいと思ってくれるから買ってくださるものなので。
現地会場に行かない配信ライブだと、グッズ購入も難しくなるので、物販でも支えられないんです。
 
吉江 これまでもライブの収益は物販で支えられている面がありました。
会場費のほかにステージ設置費や音響機材費、機材スタッフの人件費もかかるのでどうしてもコストが高くなってしまう。
そのコストをお客さまのチケット代に加えて、物販でグッズを買っていただくことでようやく成立している側面がありました。