父が癌で末期と診断され手術を繰り返すもはっきり言うと体を切り刻むだけで無駄。治らない。
結局薬で痛みを消しながら、安楽に死を迎える方向に決めました。

モルヒネ等で痛みを消しながら朦朧と毎日を過ごしやせ衰えていくばかりの父に、ある日比較的意識がはっきりしてる時に
「何かして欲しい事ある?」
と聞いてみたら

「昔お前が小さかった頃連れて皆で行ったディズニーに行きたい(連れて行きたい)」

と言われました。
家族で相談し医師にも相談し、連れ出す事に決めました。

その頃キャンドルライトリフレクションが演っていたので父に
「あのね、ディズニーランドよりも新しくできたディズニーシーって言うのが有るの、とても奇麗なショーをやってるから観に行こうよ」
と父に言いました。

車椅子に座りキャンリフを観た父が
「奇麗だなこんなに奇麗な物を最後に観れて嬉しいお前達とこんな風過ごすのも最後だろう
とても奇麗だ」
と言いました。


それから間もなく父は亡くなりました。

父はキャンリフを観た時、隠してはいましたが確かに泣いていました。
私達は気づかないふりをして父を楽しませようと笑っていました。

奇麗なショーに感動しての涙だったのかそれとも末期を悲しむ涙だったのか、私には分かりません。

けどそれでも生前あの寡黙で涙一つ見せた事の無かった父の、あの日の涙は今でも忘れられません。

最後の家族揃ってのあの一時をくれたディズニーシー、本当にありがとう。