アンパンマンミュージアム [無断転載禁止]©2ch.net

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2017/08/16(水) 01:10:42.96

アンパンマンミュージアムについて語りましょう

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:23:19.51

彼の燃したる革命の聖壇の霊火は煌々として消ゆることなけむ。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:23:35.33

彼の鳴らしたる革命の角笛の響は嚠々として止むことなけむ。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:23:51.04

彼逝くと雖も彼逝かず。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:24:06.83

彼が革命の健児たるの真骨頭は、千載の後猶残れる也。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:24:22.57

かくして粟津原頭の窮死、何の憾む所ぞ。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:24:38.30

春風秋雨七百歳、今や、聖朝の徳沢一代に光被し、新興の気運隆々として虹霓の如く、昇平の気象将に天地に満ちむとす。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:24:53.99

蒼生鼓腹して治を楽む、また一の義仲をして革命の暁鐘をならさしむるの機なきは、昭代の幸也。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:25:09.76

何でも料理屋か何からしい。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:25:25.52

広い座敷に一ぱいに大ぜい人が坐つてゐる。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:25:41.33

それが皆思ひ思ひに洋服や和服を着用してゐる。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:25:57.25

着用してゐるばかりぢやない。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:26:13.02

互に他人の着物を眺めては、勝手な品評を試みてゐる。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:26:28.77

「君のフロックは旧式だね。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:26:44.53

自然主義時代の遺物ぢやないか。」

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:27:00.27

「その結城は傑作だよ。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:27:16.01

何とも云へない人間味がある。」

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:27:31.77

君の御召しの羽織は、全然心の動きが見えないぢやないか。」

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:27:47.51

「あの紺サアヂの背広を見給へ。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:28:03.24

宛然たるペッティイ・ブルジョアだから。」

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:28:18.96

「おや、君が落語家のやうな帯をしめるのには驚いた。」

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:28:34.70

「やつぱり君が大島を着てゐると、山の手の坊ちやんと云ふ格だね。」

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:28:50.48

こんな事を盛に云ひ合つてゐる。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:29:06.09

すると一番末席に、妙な痩せ男のゐるのが見えた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:29:21.71

その男は古風な漆紋のついた、如何はしい黄びらを着用してゐる。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:29:37.50

この着物がどうもさつきから、散々槍玉に挙げられてゐるらしい。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:29:53.24

現に今も年の若い、髪を長くした先生が、

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:30:09.03

「君の着物は相不変遊んでゐるぢやないか」

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:30:24.69

その先生はどう云ふ気か、ドミニク派の僧侶じみた白い法服を着用してゐる。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:30:40.43

何でもこんな着物はバルザックが、仕事をする時に着てゐたやうだ。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:30:56.19

尤も着手はバルザック程、背も幅もないものだから、裾が大分余つてゐる。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:31:11.96

が、痩せ男は苦笑したぎり、やはり黙然と坐つてゐる。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:31:27.72

「君は始終同じ着物を着てゐるから話せないよ。」

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:31:43.46

これは銘仙だか大島だか判然しない着物を着た、やはり年少の豪傑が抛りつけた評語である。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:31:59.12

が、豪傑自身の着物も、余程長い間着てゐると見えて、襟垢がべつとり食附いてゐる。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:32:14.94

それでも黄びらを着た男は、何とも言葉を返さずにゐる。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:32:30.66

どうもその容子を見ると、よくよく意久地のない代物らしい。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:32:46.42

所が三度目には肩幅の広い、縞の粗い背広を着た男が、にやりにやり笑ひながら、半ば同情のある評語を下した。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:33:02.18

「君は何故この前の着物を着ないのだい。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:33:17.84

それぢや又逆戻りをした訳ぢやないか。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:33:33.51

しかし黄びらも似合はなくはないよ。――

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:33:49.27

諸君この男も一度は着換へをして出て来た事を思ひ出してやり給へ。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:34:04.90

さうして今後も着換へをするやうに、鞭撻の労を執つてくれ給へ。」

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:34:20.67

大ぜいの中には「ヒイア、ヒイア」

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:34:36.32

と声援を与へた向きもある、「もつと手厳しくやれ、仲間褒めをしてはいかん」

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:34:52.00

と怒号する向きもある。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:35:07.75

痩せ男は頭を掻きながら、匆々この座敷を退却した。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:35:23.38

さうして風通しの悪るさうな、場末の二階家へ帰つて来た。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:35:39.01

家の中は虫干のやうに階上にも階下にも、いろいろな着物が吊り下げてある。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:35:54.75

何か蛇の鱗のやうに光る物があると思つたら、それは戦争の時に使ふ鎖帷子や鎧だつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:36:10.50

痩せ男はこの着物の中に、傲慢不遜なあぐらを掻くと、恬然と煙草をふかし始めた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:36:26.17

その時何か云つたやうに思ふが、生憎眼のさめた今は覚えてゐない。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:36:42.31

祈角夢の話を書きながら、その一句を忘れてしまつた事は、返す返すも遺憾である。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:36:58.05

、僕はどこからかタクシイに乗り、本郷通りを一高の横から藍染橋へ下らうとしてゐた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:37:13.81

あの通りは甚だ街燈の少い、いつも真暗な往来である。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:37:29.62

そこにやはり自動車が一台、僕のタクシイの前を走つてゐた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:37:45.37

僕は巻煙草を啣へながら、勿論その車に気もとめなかつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:38:01.11

しかしだんだん近寄つて見ると、――

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:38:16.95

僕のタクシイのへツド・ライトがぼんやりその車を照らしたのを見ると、それは金色の唐艸をつけた、葬式に使ふ自動車だつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:38:32.70

大正十三年の夏、僕は室生犀星と軽井沢の小みちを歩いてゐた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:38:48.36

山砂もしつとりと湿気を含んだ、如何にももの静かな夕暮だつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:39:04.13

僕は室生と話しながら、ふと僕等の頭の上を眺めた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:39:19.89

頭の上には澄み渡つた空に黒ぐろとアカシヤが枝を張つてゐた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:39:35.66

のみならずその又枝の間に人の脚が二本ぶら下つてゐた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:39:51.41

室生も亦僕のあとから「どうした?

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:40:07.15

と言つて追ひかけて来た。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:40:22.92

僕はちよつと羞しかつたから、何とか言つて護摩化してしまつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:40:38.54

大正十四年の夏、僕は菊池寛、久米正雄、植村宋一、中山太陽堂社長などと築地の待合に食事をしてゐた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:40:54.17

僕は床柱の前に坐り、僕の右には久米正雄、僕の左には菊池寛、――

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:41:09.81

と云ふ順序に坐つてゐたのである。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:41:25.58

そのうちに僕は何かの拍子に餉台の上の麦酒罎を眺めた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:41:41.34

するとその麦酒罎には人の顔が一つ映つてゐた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:41:57.14

それは僕の顔にそつくりだつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:42:12.88

しかし何も麦酒罎は僕の顔を映してゐた訣ではない。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:42:28.66

その証拠には実在の僕は目を開いてゐたのにも関らず、幻の僕は目をつぶつた上、稍仰向いてゐたのである。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:42:44.37

僕は傍らにゐた芸者を顧み、「妙な顔が映つてゐる」

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:43:00.13

芸者は始は常談にしてゐた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:43:15.92

けれども僕の座に坐るが早いか、「あら、ほんたうに見えるわ」

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:43:31.66

菊池や久米も替る替る僕の座に来て坐つて見ては、「うん、見えるね」

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:43:47.42

などと言ひ合つていた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:44:03.17

それは久米の発見によれば、麦酒罎の向うに置いてある杯洗や何かの反射だつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:44:18.82

しかし僕は何となしに凶を感ぜずにはゐられなかつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:44:34.58

大正十五年の正月十日、僕はやはりタクシイに乗り、本郷通りを一高の横から藍染橋へ下らうとしてゐた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:44:50.20

するとあの唐艸をつけた、葬式に使ふ自動車が一台、もう一度僕のタクシイの前にぼんやりと後ろを現し出した。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:45:05.94

僕はまだその時までは前に挙げた幾つかの現象を聯絡のあるものとは思はなかつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:45:21.70

しかしこの自動車を見た時、――

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:45:37.33

殊にその中の棺を見た時、何ものか僕に冥々の裡に或警告を与へてゐる、――

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:45:53.07

そんなことをはつきり感じたのだつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:46:08.85

鏡花泉先生は古今に独歩する文宗なり。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:46:24.49

先生が俊爽の才、美人を写して化を奪ふや、太真閣前、牡丹に芬芬の香を発し、先生が清超の思、神鬼を描いて妙に入るや、鄒湛宅外、楊柳に啾啾の声を生ずるは已に天下の伝称する所、我等亦多言するを須ひずと雖も、其の明治大正の文芸に羅曼主義の大道を打開し、

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:46:40.24

艶は巫山の雨意よりも濃に、壮は易水の風色よりも烈なる鏡花世界を現出したるは啻に一代の壮挙たるのみならず、又実に百世に炳焉たる東西芸苑の盛観と言ふ可し。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:46:56.01

先生作る所の小説戯曲随筆等、長短錯落として五百余編。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:47:11.80

経には江戸三百年の風流を呑却して、万変自ら寸心に溢れ、緯には海東六十州の人情を曲尽して、一息忽ち千載に通ず。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:47:27.58

真に是れ無縫天上の錦衣。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:47:43.36

古は先生の胸中に輳つて藍玉愈温潤に、新は先生の筆下より発して蚌珠益粲然たり。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:47:59.12

加之先生の識見、直ちに本来の性情より出で、夙に泰西輓近の思想を道破せるもの勘からず。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:48:14.89

其の邪を罵り、俗を嗤ふや、一片氷雪の気天外より来り、我等の眉宇を撲たんとするの概あり。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:48:30.65

試みに先生等身の著作を以て仏蘭西羅曼主義の諸大家に比せんか、質は天七宝の柱、メリメエの巧を凌駕す可く、量は抜地無憂の樹、バルザツクの大に肩随す可し。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:48:46.40

先生の業亦偉いなる哉。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:49:02.15

先生の業の偉いなるは固より先生の天質に出づ。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/04/21(土) 02:49:17.92

然りと雖も、其一半は兀兀三十余年の間、文学三昧に精進したる先生の勇猛に帰せざる可からず。