いまや、東京ディズニーランドは、「世界でいちばん安くなっている」そうです。

 タイから来たという20歳代の女性3人組にTDR(東京ディズニーリゾート)を選んだ理由を聞くと、「中国に行くより安いし、それでいて日本はキャストのクオリティーも高いし大満足」と話してくれた。
「近くのホテルを予約しても1人合計約2万円かからなかった。日本はいつもコスパ(コストパフォーマンス)がいい」と笑顔で去って行った。

 著者たちが調べた時点(2021年2月中旬の予約価格)では、ディズニーランドの大人1日券(当日券)は、日本(東京)が8200円に対して、アメリカのフロリダ州は1万4500円、カリフォルニアやパリ、香港でも1万円を超えているそうです。日本より狭いといわれる(僕も行ったことがあるのですが、確かにサイズ的には東京の半分くらい、という印象でした)香港でも約8500円だったそうです。
 
 なぜ日本のディズニーランドはこんなに安いのか?
 
 ただし、多くの日本人は、ディズニーランドの入場料8200円を、「最近値上げもされているし、高い。訪れるのはかなり贅沢な自分へのご褒美」だと考えているのです。
 中国人の「爆買い」も、僕は「ようやく少しはお金を遣えるようになった東アジアの人々が、ちょっと背伸びをして、質の高い日本の製品を求めてきている」のだと思い込んでいたのですが、彼らは単に「日本で買うとコスパが良い」とみなしているだけなのです。

 第一生命経済研究所の永濱利廣・首席エコノミストは「一言で言えば、日本は長いデフレによって、企業が価格転嫁するメカニズムが破壊されたからだ」と指摘する。

 製品の値上げができないと企業がもうからず、企業がもうからないと賃金が上がらず、賃金が上がらないと消費が増えず結果的に物価が上がらない──という悪循環が続いているというわけだ。そうして日本の「購買力」が弱まっていった。

 デフレが続いた結果、他国では成り立たないような「300円牛丼」や「1000円カット」といった格安のファストフードや理髪店が登場した。これらはまさにデフレが生み出したビジネスモデルであり、価格を上げられないために、人手不足が続いても賃金が上がらない。「新興国はそうならないように日本を反面教師にしている」(永濱氏)