洞窟で吐いた嘘
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杖をついてうすら寒い洞窟を訪ね
洞窟を出るためにまた杖をついて歩く
昨日の夢のように広がる洞窟の中に見るものと言えば
自分が昨日までに置き去りにしてきた影ばかり
その十いくつか目の影にその姿を認めて
身を屈めてせめて罪にならない嘘を囁く
大丈夫、明日には帰るからと
影が頷いた気もするが
揺れているのはきっと自分の方
振り向きもせず帰るふりをするから
もう見つめないでくれ
行先はわかっているのだから