「Mr. Strange Love 
   または、
私は如何にして機械仕掛けの亀を愛するようになったか。」

          ○
右腕に秘められた忌むべき地金は沈黙を装って
右に左に上下の神経系を欺き続けるけれども
(市場と伽藍のその両方に残された傷跡をまた深くして)
          ○
地滑りを起こしたメタファーから這い出ると
霞のかかった主幹道路のずっと向こうから
豪華絢爛たる終幕の獅子舞が
囃子のリズムにのって揺れているように見える
(平時の想定の下、鉄条網に張り巡らされた暗喩も
黄金色に輝くモリス風装飾の無罫ノートへと帰ってゆく)
          ○
釣人を引きずりこむカッパが住んでいると
幼いころ父が私を怖がらせた池の、そのに淵には、少年…
老人のような影が水面から這いあがって
ある一つの男性的な誇りを果たしような格好でひざまずいている
          ○
ある奇妙な愛についての詩編は
手が足を拒み、口が頭を拒むような
過渡的な状態の一つの総決算のようなもの
          ○
太陽をハックする機械仕掛けの兵器を作った男は
最期まで憑りつかれたみたいに
完全な円をコンパスで彫り続けたと言うのに
アキレスと亀の密室トリックと戯れ続けるなんて、
余りにもマゾヒスティックじゃありませんか!
          ○
漂流するウミガメが奴隷的身分になり下がった時、
文字と一生分の快楽を原液で一人の巫女に託した。
これが、あの古代人(未来人)が浴びたケムリの正体である。
          ○
(無人ドローンの目には自明であったろう実像が
文字通りのタイムラインに浮上して、
人間のあらゆるメタファーの限界を否応もなく啓示しても)
          ○
例え、偽物でも、模倣物でも、レプリカであっても
それでも、私はこの機械仕掛けの亀を心から愛している。