(まずいよヘッド!触られたら流石にバレちまう。)田中の声が震えた。

(大体誰だよパンタロンを履いてきたのは。お前か?佐藤?)

(いや、だってヘッド、ズボンを履いたのはもう十二時間も前の話ですよ?覚えてる訳無いじゃ無いですかそんな昔の事!)

(バカ野郎…と言いたい所だが、俺も分からないんだよ。今俺がどんなズボンを履いているのか。)

(こんな暗いんじゃ…分かる訳無い…!ヒャア!)

「お前じゃ無いようだな。」サトシは今にも泣き出しそうな田中の足をなで回した。

「じゃあ、お前か!」(ヒッ…!)佐藤が小さな悲鳴を上げる。「お前でも無いか…。」

(じゃ、じゃあやっぱり俺か…。ど、どうしてパンタロンなんか履いて来てしまったんだろう。)

鈴木は震えが止まらぬ歯をカチカチと鳴らし目をきつく閉じた。サトシの手がその脚に触れる。

「あれ…お前でも無い。これは一体どう言う事だ?」

「リーダー 、俺、懐中電灯持ってますよ?」

泥濘ヒップスのサブリーダー、ユウタの持つ懐中電灯に照らし出されたのは埼玉の夜風にたなびく田園グリーンのパンタロン。

サトシのパンタロン。

「こう暗いと自分の履いているズボンがどんな形をしているかなんて、分かるわけ無いよな。ハハハ。」

豪快に笑うサトシの姿を見てリーダーとは斯くあるべきと悟った小川deパントマイムの面々がこのサトシと言う男に付いて行く事を決意して吸収され

泥濘ヒップスがこの街過去最大のギャングチームとなった事が吉か不吉か

全ては埼玉の風のみが知る事でしょうなあ、

オッホッホ。