街から人が消えた
父も母も 友人も恩師も
皆が消えうせた
目が覚めるとぼくは一人
寂しさが喉を貫いた

街から人が消えた
外ではすべてが固定されていた
車、動物、さざなみ、遠くの船、……
ぼくだけが道を歩き
ぼくだけが執行者で 
それでいて為政者だったが
孤独なぼくは川岸で
美しいパノラマの中
涙の球を二つこぼした

街から人が消えて
それからぼくが消えたと悟った
なぜなら人はぼくの存在を知らないから
そしてぼくはぼくの存在を知らないから
8分前の太陽だけが
ぼくの行方を知っていて
8分前の太陽だけが
止まった街を光らせる