お話5

「私にも直させてくださいな」といってスラスラと紙に書いたのが、

『音に聞く鼓が滝を打ちみれば、川辺に咲きし白百合の花』

小娘いわく

「この滝にはタンポポではなくて似合うのは白百合でしょう?
そしてこの辺りは川辺郡と呼ばれていますから沢辺ではなく川辺
の方がおよろしいのでは?」

これではもう原型をとどめていません。
完全に修正されつくされてしまったのです。

「こんな小娘にまで直されてしまうとは、何たることよ、しかも原型もとどめないほどに、、」

西行、、そのこみあげてくる怒りを必死に、抑えて、、、振り返ってみれば、、。

でも?確かに、、この方が西行の最初の和歌よりもずっと良いのです。

西行深く感じ入って、「まだまだ歌の道の修行が足りないわい」と

慢心を抑えて、反省したそうです。