オネエの卒アル備忘録
卒業アルバムをめくるたび脳裏に浮かぶのは恋心の残滓。
真っ直ぐ過ぎた片想いに懐かしさがこみ上げるわ。

きらめく朝日、道路の喧騒をよそに歩道を駆けていくと、
体をまとう生ぬるい風、ほのかに香る潮の匂い。
その風を切って走っていけば、仲間たちがいる教室に着く。
そしていつも探してしまうのよね。
今日は彼、どこに座っているんだろうって。
見つけた途端に不意に目があって、緊張で目をそらす。
いつもそうやって平静を装って、
何事もなかったように振る舞うことが随分うまくなってしまったものよ。

でも彼と、こんな近くにいられるんだって嬉しさに嘘はつけなくて、
ただただ幸せで。
他愛のない会話でも自然と笑みがこぼれて、
目の前の景色がほんのりと温かみを増すの。

あの日々はもう戻らないけど、確かにあのとき、
淡い青春が、私の身も心もやさしく包んでいたんだわね。