ところで、日本語では、「しの(凌)ぐ」(≒"to place oneself above")/
「しの(忍)ぶ」(≒"to have 〜 over oneself")において、「壟」/「野(の)」
が反転する関係で流用されていることは、例えば、ラテン語の"subīre"が、
一方で、スペイン語/ポルトガル語においては専ら、「のぼ(登)る」を
意味するように用いられ、他方で、フランス語においては専ら、
「被る」、「しの(忍)ぶ」を意味するように用いられるようになって
いることを考慮すると、「〜ふ」という表現法が、その解釈の不確定さ
を伴いながらも、中国語の表現に結びついた発音を流用して日本語を
効率的に組織化して形成することに、いかに重要な役割を果たした
のかを見てとることができるだろう。