いざとなったら、しずかちゃんが風呂に入っているところを盗撮してYouTubeにアップすれば、人気インフルエンサーになれるかも、あわよくば、それでしずかちゃんと仲良くなって結婚できるかも、という妄想をしている。自称イケメン。

完全にバーチャルの閉ざされた世界の中で生きているのび太は、遠くを見る必要はなく、ただスマホやPCの中が全てで、むしろ現実が仮想空間なのだ、という錯覚を起こしている。だから、いつもニヤニヤしてキモい。もしくは急に真顔になる。

のび太にとっては、半径1mが自分の世界の全てで、スマホやPCの先に素晴らしいワクワクする夢の世界が広がっているのだ。

スマホの画面までの20cmぐらいが見えれば全てが満足で、外に花が咲いているとか、海が綺麗だとか、草木が潤ってるかとか、そんなことはどうでもいいらしい。

アニメ、漫画、アイドルオタク、そして最近はvTuber とボーカロイドにハマっている。

バーチャルの世界に完全に浸って妄想を繰り広げることが好き。悶々と妄想の世界で考え続けることが好き。

ただ、のび太とリアルを唯一つなぐ人が、しずかちゃんなのだ。

毎日、しずかちゃんを覗きに行く。「好きだよ」と心の中で呟いた。しかし、しずかちゃんは一向に気づかない。1年たっても、2年たっても、3年たっても一向に気づかないし、振り向いてくれない。

なぜなら、のび太は初音ミクのようなバーチャルの存在でしかなく、しずかちゃんにとってはただの透明人間に過ぎないのだ。しずかちゃんに悪気はないのだが、そもそも透明人間を見ることをできる人間はいないのだ。

もし、のび太がリアルで具現化したら、痴漢や覗きや盗撮が大好きなキモい変態オタク、といった感じになってしまう。それはのび太のプライドが許さないのだ。のび太は自称イケメンだ。のび太はこの自称イケメンのプライドを守るために、偽のTwitterアイコンを掲げ、今日もバーチャルなネットの世界で、イケメンのフリを続けるのだ!

いつかのび太はしずかちゃんに気づいてもらえると、信じているみたいだ。