交通学研究 2009年研究報告』に「中央リニア新幹線導入が経済と環境に及ぼす
影響」という論文が掲載されています。
著者は東京大学の二人の研究者・山口勝弘と山崎清で、「要旨」冒頭に
「次世代の都市間高速交通網の一翼を担うことが期待される
超電導磁気浮上式鉄道の東京、名古屋、大阪間への導入
(中央リニア新幹線)」とあるように、基本的にはリニア新幹線について
期待するという立場で書かれたもので、すくなくともリニアにたいして
批判的なスタンスはありません。そして純粋な数学的な、
その意味では中立的なモデルによる定量的な分析に終始しています。
しかし、その結論は「要旨」には「中央リニア新幹線は、単体では採算が
見込めるが、〔従来の〕東海道新幹線には巨額の減収をもたらす。
従って、JR東海がリニアを導入した場合、東海道新幹線からの
需要シフトにより増収効果が小さいため中央リニア新幹線の事業収支は
大幅な赤字となる」とあり、本文で「東海道新幹線を保有する
JR東海にとって中央リニア新幹線導入は事業収支の悪化をもたらす
可能性が高い」と結論づけられています。