日本自然保護協会
「リニア中央新幹線のここが“おかしい”」 シリーズ1 ~そもそも編~
https://www.nacsj.or.jp/linear_motor/2018/04/9688/

検討会の専門家は、臨時委員も含めて15名ですが、生物多様性に関わる専門家は1名のみでした。これで十分な検討がなされるとはいいがたい陣容です。この陣容で、伊那谷ルート、木曾谷ルート、南アルプスルートの比較検討を行っています。十分な検討がなされていない証左に、中間段階でのとりまとめに対して環境省は「計画決定前段階での環境影響評価を行うべき」とそもそもの指摘をしています。小委員会では、環境面からのルートの影響評価については、環境アセスメントの調査項目に則って既存情報の有無の整理が行なわれ、「環境への配慮が必要」としていることにとどまり、具体的にどのような配慮が必要かは評価されていないのです。

中略

しかし、この東日本大震災をひきおこした東北地方太平洋沖地震は、震源が陸域から500キロ離れています。それだけ離れていてもこれだけの災害を引き起こした地震ですから、相当のエネルギーであったことがわかりますが、今後予測されている東海・東南海・南海巨大地震は、震源がはるかに近いところで起きると予測されています。日本の歴史上最大規模の地震が500キロ遠方で発生した場合と、日本列島の近傍もしくは直下で発生する地震とを比較すること自体がナンセンスであり非科学的です。

本来であれば、東日本大震災を受け、同様の地震がより近い距離で発生した場合の想定を時間をかけ、議論を尽くして、安全性の判断をするべきところ、たった1回の議論と非科学的な結論を出した小委員会は、審議会としての機能を果たしていないと言わざるを得ないのです。
リニア中央新幹線計画は、そもそものスタートから、自然環境面でも安全面でも十分な検討もなく動き出してしまった“おかしな”計画なのです。