>>560
 仮にそれが可能だとしても、もう一つの内政の延長問題が控えている。和平が進展すれば北の非核化、経済支援のための資金拠出の要請があろうし、拉致問題にしても何らかの回答が出てくるであろう。まさに外交において日本が譲歩を迫られる場面となるが、森友・加計(かけ)問題の嘘(うそ)と文書改ざんで信を失った安倍氏の声が国民の耳に届くかどうか。
 かくして、この政権、外交面でも袋小路入りの感がある。「安倍外交」の崩壊という声も聞こえてくる。2人の外交・安保専門家はどう見るか。
 和田春樹・東大名誉教授には昨年も取材した(2017年11月26日号)。米朝の緊張関係が極限化した時だった。氏はこういう時期だけに日本が日朝国交正常化カードを使って局面打開すべきだ、と提案された。

 あれから半年。日本外交は全く動かなかったが、意外や米朝が動いた。この局面をどう位置付ける?

「米朝の対等な話し合いとなるだろう。歴史に例えれば、1945年の敗戦時のマッカーサー、天皇会談ではなく、86年のレイキャビクでのゴルバチョフ、レーガン会談に近い。前者は戦勝国、戦敗国間で従属的だったが、後者は対等だった。レイキャビクでは具体的には何も決まらなかったが、会談そのものが冷戦終結への大きな一歩となった。
東アジアは朝鮮戦争、ベトナム戦争と、過去に深刻な対立があったが、この地域において核戦争の可能性を防ぎ、当事国の非核化までしようという大きな動きが始まった。
 歴史的、画期的な会談だ。この地域に住む私たちにとっても大事だと思う」
 この半年を振り返ると。
「昨年11月、北は核、ICBMのテストにいずれも成功、ミニキューバ危機の情勢となった。米国は軍事的手段を検討、マクマスター米安全保障担当補佐官中心(当時)にブラッディ・ノーズ・ストライク(鼻ずらに一発かます)作戦まで浮上したが、ビクター・チャ(当時・駐韓米大使予定者)らが反対、トランプ大統領は決断し切れなかった」

 同時に韓国、国連による和平攻勢が始まった。

「平昌(ピョンチャン)五輪の場を使って極度に高まった緊張をほぐそうという努力が成功した。韓国特使が訪朝、金正恩(キム・ジョンウン)(朝鮮労働党委員長)が核廃棄の用意がある。米朝会談がしたいと伝えた」