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 中国が得意とする社会管理システムを他国に輸出する行為は、結果的に世界で強権的な国家をどんどん増やしてしまう。実際、中国は「中国方式の社会管理を学びたい国があれば歓迎する」としている。発展途上にあるアフリカの小国家などが興味を示しているという。

 中国側にも事情はある。第2次世界大戦後、社会主義体制の国家群は膨張し、中国が親しい仲間と見なす国は一時、30カ国を超えた。ところが、1989年の東西ドイツの壁崩壊と、それに続くソ連解体に象徴される社会主義国の破綻で、中国の仲間は急速に減っていった。

 ■「仲間は4カ国のみ」の窮状

 今や中国共産党機関紙、人民日報が特別扱いする同志の国は、ベトナム、北朝鮮、キューバ、ラオスぐらいである。それらの社会主義国といえども中国べったりではない。例えばベトナムとは、かつて中越戦争を戦い、南シナ海で対峙している。

 中国は経済的には極めて大きくなったが、安全保障上は楽ではない。真の仲間が少ないのだ。そんな中国は、小さくてもよい、強権的な国家でもよいから仲間を増やす必要に迫られている。仲間らは、将来にわたって自らの体制を守る保険にもなる。これが人類運命共同体が掲げる「多元性、多様性」の一つの側面である。

 その意味では、若き金正恩(キム・ジョンウン)の北朝鮮が米朝首脳会談の結果、トランプ側に行ってもらっては大いに困るのだ。金正恩に翻弄されながらも、習近平は「大人の対応」を取っている。頻繁な中朝首脳会談は、北朝鮮引き留めのためでもある。