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93歳のマハティール首相、なぜ復権? (スグ効くニュース解説)
高橋徹アジア・エディター
スグ効くニュース解説
2018/7/31 6:00日本経済新聞 電子版

 マレーシアのマハティール氏が15年ぶりに首相へ返り咲きました。93歳と世界最高齢の国家リーダーは、なぜ復権できたのですか。

回答者:高橋徹アジア・エディター 5月のマレーシア総選挙の結果には世界中があっと驚きました。マハティール氏が率いる旧野党連合が、事前の劣勢予想を覆してナジブ首相(当時)の旧与党連合を破り、同国史上初の政権交代を演じたからです。

 マハティール氏は1981年から2003年まで長期政権を担い、マレーシアを高度成長に導いた「中興の祖」です。退任後も政界のご意見番として影響力を保ってきましたが、09年に首相に就いたナジブ氏とは、もともとは師弟関係と言っていい間柄でした。

 2人が袂(たもと)を分かったきっかけは、15年に表面化したナジブ氏の汚職疑惑です。米紙の報道で、政府系ファンド「1MDB」から巨額資金を不正に流用した疑いが明るみに出たのです。これにマハティール氏は激怒しました。横領額は45億ドル(約5000億円)以上とみられています。

 加えてナジブ氏はマハティール氏が手塩にかけて育てた国民車メーカー「プロトン」の身売りを画策し、最終的に株式の半数を中国企業へ売却してしまいました。マハティール氏は「我が子を失った」と嘆きました。

 不信感を募らせたマハティール氏は、ナジブ氏降ろしに動きます。政権交代を掲げて16年に新党を立ち上げ、かつての首相時代に敵対した旧野党と共闘態勢を整えました。「敵の敵は味方」とばかり、旧敵と手を組んだわけです。

 ナジブ氏は自陣営に有利な選挙区変更などで押さえ込もうとしましたが、かえって逆効果でした。腐敗や強権を嫌った国民の支持はマハティール氏に向かいました。