韓国・釜山の日本総領事館前に慰安婦を象徴する少女像が設置された問題で、政府が対抗措置として長嶺安政駐韓大使を一時帰国させてから9日で1カ月を迎える。
首相官邸は、韓国側が撤去に向けた動きを見せるまで大使を戻さない構えを崩さないが、事態打開の糸口は見えない。

朴槿恵大統領の職務停止に伴う韓国内の混乱もあり、こう着状態が続いている。
 
岸田文雄外相は3日の記者会見で、「慰安婦問題に関する日韓合意を誠実に履行することは、両国政府の大きな責任だ」と訴えた。
 
少女像は昨年末、韓国の市民団体が釜山市東区に設置。これを受け、日本政府は大使の一時帰国を含む4項目の対抗措置を打ち出し、韓国側に抗議の意思を示した。
 
野田政権は2012年に李明博大統領(当時)の竹島上陸に抗議し、武藤正敏大使(同)を一時帰国させ、12日後に帰任させた。
一方、安倍晋三首相は「像が撤去されるまで戻さない」との意向とされ、現状では長嶺大使の帰任のめどはまったく立っていない。
 
首相には、問題解決に向けた韓国側の対応が見えないにもかかわらず、一方的に日本から動けば、
保守層を中心に世論の批判を浴びかねないとの懸念があるとみられる。
 
実際、自民党の先月27日の部会では「国際司法裁判所(ICJ)に提訴すべきだ」
「韓国側に一定の前進がない限り、大使を戻さないでほしい」といった激しい突き上げが相次いだ。官邸もむやみに動けない状況だ。
 
これに対し、韓国内では、事態が改善に向かうどころかむしろ悪化している。釜山市東区と市民団体は、保存に向けた協議会設置で合意した。
地方議員が中心となり、島根県・竹島への像設置に向けた募金活動も始まった。
 
年内に予定される韓国大統領選の有力候補は、ほとんどが慰安婦問題をめぐる日韓合意に批判的で、
選挙結果によっては合意が見直されたり、白紙化したりすることも考えられる。
 
少女像問題の長期化が核・ミサイル開発を繰り返す北朝鮮への対応で、日韓の連携に影響を及ぼす可能性も指摘されている。