「もはや市場ではない」国債市場の疲弊に嘆きの声−黒田緩和副作用

日本銀行の黒田東彦総裁による異次元緩和が波乱の様相だ。
金利の低下は狙い通りに進んでいるが、国債市場の機能障害
という副作用は一段と深刻化しているのが心配だ。
日銀は巨額の国債買い入れにより、発行残高の約3分の1以上
を保有するに至っており、市場への影響が懸念されている。
量的緩和のみならず、マイナス金利政策の導入を受け、
長期金利の指標となる新発10年物国債利回りはマイナス0.135%
まで過去最低を記録したこともあった。
残存12年前後までの利回りがゼロ%を下回つていた。
投資家の国債売買高が低迷する一方、ボラティリティ(相場変動率)は上昇。
債券市場サーベイでは、回答した金融機関の41%が市場機能が低いと答えた。
黒田総裁は2%物価目標の達成に向けて緩和を強化してきたが、
消費者物価上昇率は横ばい圏内にとどまり、予想インフレ率も低迷。
黒田総裁は金融緩和の限界説を否定するが、
金融政策に依存した日本経済の活性化には悲観的な見方が広がっている。
メリルリンチ日本証券の大崎秀一チーフ金利ストラテジストは、
国債市場は「どんどん疲弊して荒れてきている」と指摘。
財務省の入札で仕入れて日銀に転売する日銀トレードなどを除くと「実質的には誰も取引に参加していない。もはや市場ではない」と言う。
黒田緩和は歴史的な実験だったが、結果は芳しくないようだ。