バークに依拠しながら、こう書いたアーレントと、戦後日本の「人権派」のどちらが、

人権を尊重しているのか。自明と考える。さらに言えば、長く無国籍であった彼女と、

平和で豊かな日本に生れながら、その国旗・国家にさえ敬意を示さない「人権派」のどちらが、

真摯で誠実か、論じるまでもなかろう。この国で高らかに「人権」を掲げる連中は多く、

侵略の歴史に学べ、などと主張する。だが、アーレントは第二巻の緒言でこう明言した。

  《われわれは過去からいかに多くを学び得ようとも、

   それによって未来を知ることはできないのである》ix