徳富蘇峰「終戦後日記U」何故摘発せぬ 将校の不正行為

終戦時不正を行った将校に対する非難の声は近頃薄らいで来た感じだが、
警察は一体本気で不正摘発をしているのだろうか?…
私自身戦災者で又復員者ですが、先日…
ある裏通りで四、五歳位の子供四人に「やーい軍服野郎だ」と石を投げつけられ
――私は軍服以外に着る物がない――余りの事に子供の母親に文句を言うと、
…意外な事を聞かされて呆然と驚き入りました…
調布飛行場の…通信隊長の中尉…は終戦のどさくさに隊の貨物自動車を、一台は調布町役場に、
一台は同町の某商店に三万円で売り飛ばし、ドラム缶入ガソリン数本と米数十俵をも横領したとの事です…
その後、その将校は物を売りつけた同町の某商店で働いているとの事です。
また…柴崎航空通信隊の…某大尉は米数俵を持出し…
○○少佐という人は終戦当時一日の間にトラックに山と積んだ物資を六回も家に運び込み、
家は荷物で一杯だったとの事です。
こうした事実を見聞している子供達はひもじい心も手伝って
軍服姿をみると憎悪の気持ちをかき立てられる…と聞かされました。
復員軍人一般の悪評を招くこうした不正軍人を何故警察は摘発しないのか…
肩書きや位階勲位等が怖い…のか、
警察官よ…恥ることなき職務を果たし…官閥精神をきれいさっぱり拭ってくれ

小澤操・「東京新聞」昭和二十一年一月十五日