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ホワイトハウスは賭博場 トランプ政策は危険域に
「恐怖の男」著者 ボブ・ウッドワード氏に聞く
2018/11/17 18:00日本経済新聞 電子版
(抜粋)
トランプ政権の内幕を記した「FEAR 恐怖の男」の著者、ボブ・ウッドワード氏が日本経済新聞の取材に応じた。かつてニクソン元大統領の不正をスクープした同氏はホワイトハウスが危うい政策の「カジノ(賭博場)」と化したと警告し、中間選挙後の米国に「激変の前兆」があると語った。

■権力とは「恐怖」

――恐怖(FEAR)という題にはどんな経緯が?

「2年半前、トランプ氏へのインタビューで権力をどう使うかと聞いた。『真の権力とは……この言葉は使いたくないが……恐怖だ』が答えだった。極力、人を恐れさせるのが力の源泉だというのだ」

「大統領は北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長に、こっちの核ボタンは君のよりも大きいと脅し、会談が実現した。戦争をしないと約束して敵意を散らしたのはいい。だがトランプ氏は北朝鮮が核を廃棄するという極めて非現実的な期待をしている」

――取材の過程は。

「関係者の自宅を訪ね、話を聞いた。大統領に近い人々も彼の政策や行動に憂慮しているからこそ、家に上げてくれた。この国は『統治の危機』にひんしている。日記や内部文書を入手し、本に多くを盛り込んだ」

――トランプ氏の考え方や行動への評価は。

「貿易赤字で米国がお金を失うという理屈は明らかな間違いだ。安く品質の良い物が買えれば他の消費にお金を回せる。それでも政権は中国への制裁関税に突き進む。貿易戦争は経済学博士の中国に幼稚園で遊ぶ米国が挑んでいる構図だ」

「トランプ氏は選挙に勝つ期待もなく大統領に当選し、自己確認と快感を覚えた。『みんな間違いだ。おれは正しかった』と確信した。日本や韓国などとの防衛同盟は資金の無駄だと彼は思っている。マティス国防長官が『格安な出費です』と言っても理解しない」