https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41217590T10C19A2TCR000/
[FT]「監視資本主義」という衝撃
2019/2/14 2:00日本経済新聞 電子版

Financial Times
将来を約束された職業に就きたいなら、AI(人工知能)関連の倫理学者になることを検討するといい。AIはプログラムに何らかのバイアスがかかっているのが問題だ、という指摘がほぼ毎週のように豪華な会場で開かれる様々なセミナーでなされている。IT(情報技術)企業も、自社がいかに責任ある会社かをアピールしようと、倫理の専門家を雇うことに懸命だ。

AIが倫理面から見てどう機能し、動いているのかという問題に、このように多くの人が関心を持つのは歓迎すべきことだ。我々の生活を形作るうえで、AIのプログラムはますます重要な役割を果たすようになっているからだ。従って、我々はプログラムが何をしているかを理解する必要がある。

■資本主義のルール変え、権力構造も変える

ただ、このAIの倫理的な問題に関する論争は、別のはるかに大きい、将来を左右するような重要な議論を見えにくくする恐れがある。IT各社はあまり語ろうとしないが、今後のカネと権力を誰が握るのかという激烈な闘いに関する議論だ。

私たちはプログラムの機能を理解するだけでなく、権力を巡る闘争についても知る必要があるが、そういう意味で、米ハーバード・ビジネス・スクールの名誉教授ショシャナ・ズボフ氏は、近著「ジ・エイジ・オブ・サーベイランス・キャピタリズム(監視資本主義の時代)」(邦訳未刊)で、役立つ指摘をしてくれている。IT各社がいかに資本主義のルールを書き換えつつあり、権力構造をも変えつつあるかという指摘だ。

ズボフ氏の見解では、米グーグル、米フェイスブック、中国のアリババ集団、同騰訊控股(テンセント)などの企業は、消費者を"監視"して様々なデータを収集・分析し、それを"資源"にかつてない規模で効果的に人の行動を先読みすることで稼ぐ、新しい形の資本主義を開きつつある。