★革命有效説とは・・・

憲法改正の限界があるとする根源には、「國體論」があるからであつて、限界を認めない無限界説は、實は「主權論」であり、「國體論」を否定する見解である。
無限界であるから、國體の破壞も許されるとするのであつて、假に、主權論ではなくても、少なくとも反國體論である。
(略)
革命有效説は、帝國憲法の改正としては「絶對無效」であるが、「革命憲法」としては「有效」であるとする點にある。
(略)
つまるところ、形式的には「限界説」に立ちつつ、「革命」といふものを媒介させれば、實質的には「無限界説」へと變節するための方便とトリックを編み出したのがこの革命有效説である。
 それは、要約すれば次のとほりの見解であつた。ポツダム宣言の受諾により帝國憲法の根本規範に變更が生じ、「天皇制の根據が~權主義から國民主權主義に」變化して「革命」が起こつたとするのである。
しかし、ポツダム宣言の受諾は、帝國憲法第13條の講和大權に基づくものであつて、明らかに帝國憲法による統治行爲であつて、この時點で根本規範の變更はありえない。終戰の詔書にも「茲ニ國體ヲ護持シテ」とあり、
ポツダム宣言においても根本規範の變更を求めてゐなかつたこと、さらに革命の概念についても矛盾がある
そもそも、「~權主義」といふ概念は不明確であり、假にこれが「國體論」を意味するものとしても、それが何ゆゑに「主權論」へと變化するのか。
しかも、「天皇主權」を經由することなく一足飛びに「國民主權」なのかといふ點において論理の飛躍がある。
根本規範の變更である「革命」がポツダム宣言の受諾といふ講和大權の行使によつてもたらされたと認めるのであれば、
それは帝國憲法下の合法的な行爲でなければ保護されない。
そもそも「憲法」と「革命」とは對立概念として用ゐられるのであつて、これを「革命」と呼稱するかは用語例の問題であるとしても、
この「革命」が有效であるとされるためには、これが帝國憲法體制下の法秩序において合法的(合憲的)な行爲でなければならないことは當然のことである。
通常の違憲行爲であつても無效であるとされるにもかかはらず、それ以上の違憲行爲である國體變更を目的としたこの「革命」が有效であるはずはないのである。