世襲という観念は、伝統的歴史的観念であって、世襲が行われる
各具体的場合によってその内容を異にするものであろうと思われる。場合によっては
血統上の継続すら要件としない世襲の例も存し得るのである。然からば皇位の世襲
という場合の世襲はどんな内容をもつか。典範義解はこれを(一)皇祚を踐むは皇胤に
限る(二)皇祚を踐むは男系に限る(三)皇祚は一系にして分裂すべからざることの
三点に要約している。そうしてこれは歴史上一の例外もなくつづいて来た客観的事実
にもとづく原則である。世襲という観念の内容について他によるべき基準がない以上
これによらなければならぬ。そうすれば少なくとも女系ということは皇位の世襲の観念
の中に含まれていないと云えるであろう。

皇室典範案の法制局想定問答(法制局、昭和21年11月)