女系及び女天皇を認めない理由如何。
答 
 皇統は男系に依り統一することが適当である。我が国多年の成法も
亦然りである。女系が問題になるのは、その系統の始祖たる皇族女子に
皇族にあらざる配偶者が入夫として存在しその間に子孫がある場合で
あって、此の場合女系の子孫は仍皇族にあらざる配偶者の子孫で臣下で
あるということが強く感ぜられ、皇統が皇族にあらざる配偶者の家系に
移ったと観念されることをも免れない。かような点を考えて女系を
認めないのである。右の外女系を認める実益は、皇后継承の順序の数え方
にもあり、この場合は、特に皇族内部にあっても意味を持って来るが、
一般の観念の懸念を察し、現制を踏襲することを適当と考えたのである。
 女帝は配偶者があることを予想しなくてはならぬばかりでなく、
その配偶者が皇族でない者から出ていることが多いことも考慮に入れ
なければならぬ。かような場合に皇族でない配偶者の実際上の立場が問題と
なることを懸念される。而も女帝が独身ならば子孫はあり得ないし、
配偶者があって子孫があっても、前述の理由で女系を認めないとすれば、
女帝は皇位の世襲相続ということからいえば、既に初めからその子孫に
よって継承されないことに定まっている。依ってこの関係から見れば女帝を
他に男子の皇位継承資格者があるにかかわらず、認めることは皇位世襲と
いうことに添わぬことであり、他に男子の皇位継承者がなくて女帝を
認めることは、天皇制を一世だけ延命させるだけのことに過ぎない。
配偶者の問題と皇位継承の問題から女帝はこれを認めないことを適当と
考えたのである。

皇室典範案の想定問答(法制局、昭和21年11月)