「どんな内容でも自由」ではない

例えば、絵画は市場で取引されるので私的財であるとも言える。しかし、個人が名画を所有していても、もたらされる便益はその個人と家族などに限定され、私的便益と社会的便益の乖離がある。
美術館で一般に公開すれば、こうした乖離はなくなり、絵画は社会的に正当な価値が得られる。もっとも、こうした「準公共財」は「価値財」(merit goods)ともいわれ、専門家による鑑定など一定の価値判断・社会的判断が求められる。

要するに、芸術文化は純粋私的財ではないため、最適な社会的供給のためには公的支援の必要性が正当化される。
しかしこのとき、社会的な判断をも要求される。「表現の自由があるから、どのような内容であれ公費支出を当然受けられる」というわけでないのだ。

一般論として、特定の芸術作品を公金による助成の対象にしないというのは、必ずしも表現の自由の侵害にはならない。これは世界中どこでも問題とされることのない、シンプルな原則だ。

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