ポツダム宣言に於ける日本側の權利(聯合國側の義務)

一、「『カイロ』宣言ノ條項ハ履行セラル」―― 第八項の結果、同宣言中の「右聯合國は自分の爲に何等の利得をも要求するものに非ず。
亦領土擴張の何等の念をも有するものに非ず」の箇所は日本の利益の爲に援用しうるものである。
肆にベルサイユ條約第一條に據る第一次世界大戰以後日本が所得したる島嶼や臺灣や澎湖島は盜取したのではなく、正當なる日清媾和條約に據り所得したものなる縡が判明したならば、
此の後段の剥奪措置が適當であるか何うかの再檢討や原状囘復措置も後日に殘る縡になる。
況やヤルタ祕密協定に據る千島、樺太の奪取の如きは明かに本條項と抵觸するもので當然無視される可きものである。

二、日本國軍隊ハ完全ニ武裝ヲ解除セラレタル後各自ノ家庭ニ復歸シ平和的且生産的ノ生活ヲ營ムノ機會ヲ得シメラルヘシ(第九項)
(蘇聯領内に移送された日本軍人及び一般人の總數は五十七萬五千人に及んでゐる。
斯くの如きは單に蘇聯一國の不信は云ふ迄もなく、聯合國全體の本條約違反と云ふ可きである。)

三、吾等ハ日本人ヲ民族トシテ奴隸化セントシ又ハ國民トシテ滅亡セシメントスルノ意圖ヲ有スルモノニ非ズ(第十項)
(占領統治の苛酷は本條約違反たるものが多かつたが、占領憲法の強要の如きは其の最たるものであつた。
當時我が政府も議會も國會も一片の抗議さへ出しえぬ程奴隷化されてゐた。)

四、言論、宗教及思想ノ自由並ニ基本的人権ノ尊重ハ確立セラルヘシ(第十項)
(各般の占領政策は完全に本項に違反してゐた縡は多言を要しない。)

五、日本國ハ其ノ經濟ヲ支持シ且公正ナル實物賠償ノ取立ヲ可能ナラシムルカ如キ?業ヲ維持スルコトヲ許サルヘシ(第十一項)

六、右目的ノ爲原料ノ入手(其ノ支配トハ之ヲ區別ス)ヲ許可サルヘシ(第十一項)

七、日本國ハ將來世界貿易關係ヘノ參加ヲ許サルヘシ(第十一項)

八、前記諸目的カ達成セラレ且日本國國民ノ自由ニ表明セル意思ニ從ヒ平和的傾向ヲ有シ且責任アル政府カ樹立セラルルニ於テハ聯合國ノ占領軍ハ直ニ日本國ヨリ撤收セラルヘシ(第十二項)