田中 「アメリカ人は主張が強い」と言われますから、誰もが積極的に意見を言っているのかと思いきや、実はサイレントマジョリティは口をつぐんでいるようですね。アメリカ人も個人的に会ってみると中庸の人はわりといます。でもそういう人たちが発言したいと思える場がネット上にはない。

日本でもそうですが、相手を理解しながら議論をしたいという人は両極から批判され、弾き出されてしまいます。私たちの調査では、「ネットで自分自身が何の制約もなく自由にものを言っている」と思うかという質問に対して「そうは思わない」が54%、「自由にものを言っている」と思っている人は9%しかいません。大半の人は、ネットで意見を言えていない。マウントを取りたい人、自分の正義を主張する人だけが積極的に語っている。すると対立する意見同士を攻撃し合う光景が広がり、極端な分断が起こっているように見えます。そういうふうにネットのしくみができているからです。ネット上の言論空間では健全な対話が失われています。