翔一「…ああ、泡立てちゃダメだって。こうやって…解きほぐすんだよ」
弦太朗「うう、泡立て器でガーッとやりたい…」
総司「ケーキ作りじゃないんだぞ…おっ、タケル上手いな」
タケル「ふふ、弦太朗には負けないよっ」
映司「翔一〜総司〜」
ソウゴ「あ、映司兄ちゃん」
映司「或人兄さんを保護してきたよ〜」
総司「保護…あぁ、士じゃないがだいたい分かった。災難だったな兄さん」
居間をちらっと見た総司が言う。
或人「いや…想像はしてたけど参った…ここは何してるの?」
タケル「家庭科の宿題、調理実習!」
弦太朗・ソウゴ「…の、補習」
タケル「俺は補習じゃないよ」
翔一「という訳で手伝わされてるんだよ」
映司「頑張ってるなぁ、じゃあ俺は戻るよ〜」
ソウゴ「はーい行ってらっしゃい〜」
総司「ソウゴは卵を解け」
ソウゴ「…はーい」
或人「卵焼きでも作るの?」
翔一「ご飯と味噌汁ともう一品、らしいから、厚焼き玉子をね」
或人「厚焼き玉子かぁ、俺作ってみてもいい?」
翔一「或人兄さん、作れるの?」
或人「家でちょくちょくやってたからね…卵ちょうだい」
総司「はい、今日は沢山作るからな、手伝ってくれるならありがたい」
或人は総司から受けとった卵を割って手早く解き、卵焼き器に流す。高校生組は自分の作業も忘れてじっと見ている。
ソウゴ「兄ちゃん上手い…」
弦太朗「ホントだ…兄貴上手いな」
或人「自分で食べる分を作ってたりしたからね、父さんは…」
食べられなかったけど、と続けようとして或人は口をつぐむ。
総司「…すまない兄さん、つらいことを思い出させてしまったかな」
或人「ああいやいや、気にしないで」
ソウゴ「兄ちゃん、俺も両親いなくておじさんだけだったから…」
或人「そうか…ソウゴもだったか…」
ソウゴ「でも俺、おじさんに甘えてたかな…」