>>957

 (その時、 礼拝堂の扉が開く音が聞こえる。 天道が戻ってきたと思い、微笑みを浮かべて振り返るひより)
 (だが、すぐに 笑顔が凍り付く。  戸口から入って来たのは、 黒い喪服の女 ・ 間宮麗奈だった…)

麗奈 「騙されるな。 天道総司の言う事は、しょせん、絵空事だ」

(ゆっくりと歩いて近づいてくる麗奈の背後で、扉が音を立てて 閉じる)

ひより 「ボクは……あいつを信じたい」

麗奈 「ほぅ。 (長椅子を回り込んで近づいてくる) だが、 私を此処へ誘ったのは あいつだぞ。
     やつは… (ひよりの後ろの席に座る) お前を売ったのだ」

ひより 「…… (視線を逸らし、戸惑う)」

麗奈 「当然だろ? (艶笑) お前はワーム。 (ひよりの頬にかかる髪に 右手で触れる) ワームを庇えば、人間を敵に回す」

ひより 「やめろ! (力無く、髪に触れる麗奈の手を払う) やめてくれ……」

  (泣き出しそうな表情で俯く ひより。 長椅子から立ち上がった麗奈が、更に 厳しい言葉で 追い打ちをかける)

麗奈 「人間にとって、ワームは 敵。 (ひよりに近付いて、顔を下から覗き込む) いわば お前は 人類の敵だ。
     (意地の悪い笑み) 人間社会では 生きていけない」

 (冷たい現実を突きつける麗奈。 耐えきれなくなったひよりは 立ち上がって その場から逃げ出す)
 (扉を開いて 外に走り去るひより。  振り返って見送る麗奈が立ち上がり、 一人 ほくそ笑む……)


       (カブト 第32話より)