>>107

(荷物の揚げ降ろし用の 赤錆びたクレーンが設置されている 港の岸壁)
(其処に、左肘にスクールバッグを下げた恵子が ただならぬ様子で駆けてくる)

 (岸壁の縁まで来て 立ち止まるなり、携帯電話に付けていたフクロウのストラップを毟り取る)

恵子 「何が 頭の良くなる御守りよ。 こんなもの! (力任せに 地面へ投げ捨てる)」

 (陶器製の御守りは 地面に散らばるコンクリート片にぶつかり、ガチャン! と音を立てて 砕け散る)

 (水面を吹く強風が 恵子の髪を 千々に乱す)
 (我に返って見下ろすと、フクロウは 胴体部分が真っ二つになって 地面の上に転がっている)

??? 「それは 俺だ…」

 (恵子が 顔を上げて 声の主を見る)
 (黒いコートを纏った異様な風体の若い男が 所在無げに 砂利を踏みしめながら 歩いて来る…)


       (カブト 第37話より)